みなさん、エマルジョン燃料について正しい知識をお持ちでしょうか。
「ボイラーの燃料代が減る」「水を混ぜる」という断片的な情報のみで、実際はよくわからないという方も多いかと思われます。
こちらでは、まずエマルジョン燃料が注目される背景も含め、エマルジョン燃料の基本的な仕組みをわかりやすく解説していきます。
一言でいうと、
のことです。
「エマルジョン」とは?
通常であれば混ざり合うことのない油と水を、界面活性剤を使って混ぜ合わせたことを「エマルジョン(乳化)」といいます。この性質は乳液や整髪料といった化粧品、マヨネーズを代表とした食品類など非常に多くの分野で用いられています。
これらと同じように、重油や軽油、灯油などの燃料に水と界面活性剤を加えて混ぜ合わせ、従来の燃料と同等の燃焼効率を持たせたのが「エマルジョン燃料」です。
水が燃えるわけではありません
“燃料+水”という組み合わせは、さも水が燃料の代替品になるように思えますが、水が燃料として燃えるわけではありません。
水は、燃料としてではなく、重油など燃料の燃焼効果を高めるために添加されます。水が入ると、ボイラー環境で起こっていた燃料の不完全燃焼が起こりにくくなり、これまでよりも少ない燃料で、これまでと同等の燃焼を起こすことができるのです。
AITエマルジョン燃料装置にみる燃焼の仕組み
油が水を包み込んだエマルジョン燃料(油中水滴型/Water inOil)を投入する
外側の油が燃焼されることで、内側の水が加熱される
水が急激に沸騰して微爆発を起こす
水の爆発にともなって油が微粒子化し、表面積が従来の約3,000倍に増える
表面積が増えることで空気との接触面積が飛躍的に増え、少ない空気・少ない油(燃料)で十分な燃焼が行える
エマルジョン燃料は一律して同じ性能を持った新型の燃料というわけではなく、ベースとして用いる燃料や用途によってカスタマイズをするという発想が適切です。
料別の分類
- A重油+水 は A重油エマルジョン燃料
- C重油+水 は C重油エマルジョン燃料
- 軽油 +水 は 軽油エマルジョン燃料
- 灯油 +水 は 灯油エマルジョン燃料
- 廃食用油 +水 は 廃食用油エマルジョン燃料
いずれも、ベースとなる燃料の法規制が適用されます。
用途に適した配合割合
- 工場などのボイラーの燃料→水の割合は25%~30%
- ディーゼルエンジンの燃料→水の割合は15%~20%
燃料と水の混合比率は、燃料製造装置ごとに異なりますが、AITエマルジョン燃料装置では
標準として燃料:水=70:30の割合でエマルジョン燃料を製造可能です。
新興国も含めて今後ますますの経済・産業の発展が予測されるなかで、2050年においても世界のエネルギーのうち85%を化石燃料に依存することが予測されています。
原油価格高騰による燃料費負担増
中東の政治情勢の緊張とともに高騰を続ける原油価格。燃料価格の高騰が事業者にとって大きな負担となっています。
深刻な環境汚染
温室効果ガスの排出増による地球温暖化、大気汚染による健康被害など、化石燃料に頼った産業発展の影響で世界的に環境汚染が問題になっています。
これらの要因から、世界中で化石燃料に代わる天然ガスや新エネルギーの開発が進んでいますが、完全な実用化に至るにはまだまだ課題が多く残ります。そこで注目されているのが、重油・軽油などを使用しながら燃料費を削減し、環境負荷を下げることができる「エマルジョン燃料」です。